会社に縛られない、ヘルパーの仕事。障がい者の「やってみたい」を支える。
「僕は体力が続く限り、障がい者支援の現場に出ていたいんです」
そう誇らしげに語ってくれたのは、川畑 達也(かわばた たつや)さん。
障がい者の自立支援や居宅介護支援を行うNPO法人 自立生活センター・FREEのヘルパーです。
川畑さんは前職でも障がい者施設で働いていましたが、数ヶ月間だけ現場を離れたときがありました。そのとき、心から感じたのは「現場に戻りたい」。
川畑さんがそこまで思うのはなぜでしょうか?福祉の現場は、「大変そう」「辛そう」とネガティブに語られることも少なくありません。 しかし、川畑さんは「それは一部分がフォーカスされすぎています」と言います。 介護福祉士になったきっかけや利用者との思い出を話すとき、川畑さんから自然と笑みがこぼれていました。「現場に出ていたい」という言葉の真意を、ぜひ最後まで読んで確かめてください。柔らかい雰囲気と働きやすい職場環境。利用者と対等に向き合いながら、自立を支援するヘルパーの仕事。
「利用者さんに、ダイエット方法やキャンプ動画を教えてもらっているんですよ」
と、現場で働く姿を見せながら話してくれた川畑さん。その姿は「バリバリと働いている」というより、友だちと話しているようなとても和やかな雰囲気に包まれていました。
「『障がい者=何もかも手伝わないといけない』わけではありません。できることも当然あるので、動きが難しいときにヘルパーがサポートするだけです」
確かに、川畑さんが率先して動くのはドアを開けたり、家に入る際に車椅子の車輪の汚れを取るとき。他は先回りせず、利用者から要望があるときに動いています。
入浴介助や車椅子とベッド間の移動など体力を使う場面もありますが、入社後は慣れるまで先輩のサポートがあります。
「FREEのいいところは、上司や先輩ヘルパーが『困ってない?大丈夫?』と声かけをしてくれるところです。
介護の技術は後からついてくるので、経験が浅い人も心配せずに入ってきてほしいですね」
川畑さん自身も、前職の障がい者施設で訪問介護の経験があったものの、最初のうちは毎日利用者と一対一で関わることに戸惑いがあったそう。しかし、職員同士のフランクな関係と、何でも相談しやすい職場環境のおかげで、無理なく自分のペースで働けるようになったと言います。
現在、川畑さんと同じヘルパーを募集しています。 利用者によって時間はまちまちですが、8時~10時の間に利用者宅を訪問し、炊事や洗濯・清掃など身の回りをサポートします。 訪問は多くても一日3・4軒。 ゆとりを持って働けるのも、FREEのいいところ。
「前職は施設で決めたスケジュールの中でこなさないといけなかったり、定時はあるもののサービス残業が多かったのですが、FREEは利用者さんのスケジュールをもとにシフトを組んで動くので、サービス残業をすることがないのがありがたいです。訪問先へ直行し、そのまま直帰できるので通勤も楽です」
利用者は、FREEがある吹田市内や北摂地域の人がほとんど。ヘルパーたちの移動はほとんどがバイクで、原付免許さえあれば会社からバイクの支給があります。川畑さんが「大変そう」と思われがちな福祉業界に飛び込んだのはなぜでしょうか?
「父の知り合いが特別養護老人ホームで働いていて、昔施設を見学したんです。おじいちゃんやおばあちゃんとのんびり過ごしながら、自分が楽しく話してることが相手のためにもなっている、それを仕事としていけるならすごく楽しんじゃないかって思ったんです」 川畑さんは福祉専門学校の実習や移動支援のアルバイトを重ねているうちに、自分に合うのは障がい者の分野だと気づいたそう。
「障がい者の皆さんは素直なんです。僕は人間関係の駆け引きとか、言葉の裏を読むのが苦手で…。でも障がい者の皆さんは自分の思いを率直に伝えてくれる。重度の障がいだと喜怒哀楽を読み取るのが難しい方もいますが、打ち解けたときが本当に嬉しいんです。移動支援で行ったことがない場所に行けるのも楽しいから、ずっと現場にいたいんですよね」
人の温かさがこの業界にたくさん溢れていることが、おだやかで優しい川畑さんにとってこの上なくマッチしていたのでしょう。福祉業界に従事してもう10年以上になる中で、川畑さんは人間らしさに触れる面白みも感じているそう。
「利用者さんも僕も人間なので、気分がいいときもあれば悪いときもあります。でもそういった人間味があるところも面白いと思ってるんです。訪問介護は利用者さんやそのご家庭のペースに順応しないといけないけど、メリハリや変化が面白いと感じられる人は合ってるんじゃないかな」
川畑さんをはじめ、FREEの職員は利用者と対等に向き合うことを心がけています。支援をしてあげている・支援をしてもらっているという上下関係があると、障がい者の自立を阻害してしまう恐れがあるからです。
「利用者さんの『これがしたい』という要望に『こっちの方がいいんじゃない?』とヘルパーのペースに持っていって相手を変えようとしたり、できることをヘルパーがやってしまうのは福祉ではないですよね。FREEでは常に『自立のための支援とは?』という課題に向き合っています。福祉業界は正解がないからこそ、迷いながらもいろいろと試して、楽しみながら正解を追い求められる人が向いていると思います」
川畑さんは福祉を楽しむ上で大切にしていることがあると言います。
「例えば、介護の職業病と言われる腰痛も、患ってしまう前にケアをしたり介助方法を見直すことが大切です。自分がしんどいやり方だと利用者さんもしんどかったりします。自分のことを考えることも、実は相手のためになるんですよ。サポートする相手と同じように、自分にも向き合うことが大切だと思っています」
やりすぎない支援は、障がい者の自立を促し、またヘルパーの負担も軽減できます。川畑さんはこれからも、利用者にも自分にも対等に向き合いながら、利用者の新しい経験や選択肢の数を増やしていきます。
「誰かの力を借りてでも、やりたいことをやってみたかった」。 ヘルパーは、障がい者の選択肢を増やしていくことができる仕事。
「自身も身体障がい者で、大人になるにつれ直面した大きな課題に向き合ってきました」 そう語るのは、Freeの設立メンバーの池田篤さんです。 「両親が高齢になって、介護が必要になったんですよね。そのとき、『このままいくと共倒れになる!』と思いまして…。 創立メンバーの中に私よりも重度の障がいがありながらも、ひとり暮らしをしているメンバーがいたので、私もひとり暮らしを考え始めたんです」 そして、「できるわけない」と止めるご両親を説得し、ひとり暮らしをスタートさせました。 そこで痛感したのは、ヘルパーがいるありがたみでした。 「小さい頃から両親が何でもやってくれていた。でも逆に、自分で自由に選択できてなかったんです。 やりたいことを言って、親が嫌な顔をするんじゃないかって…顔色をうかがってました。 でも誰かの力を借りてでも、やりたいことをやってみたかったんですよね。『この選択しかないよ』 『あなたにはこれしかできないんだよ』って言われていたことが、ヘルパーの力を借りることで実は違 った、という発見もありました」 ひとり暮らしをするようになると、自分で考え、選択し、提案できるようになり…その喜びはひとしおだったといいます。「いろんな選択ができて、いろんなところに出かけられるから、ヘルパーの力って大きいなぁと実感します。 協力してくれる人がいることで様々なことを選択でき、生活って成り立っていくんだなぁ、と」
あなたもFreeで働いてみませんか?
「こんなふうにヘルパーの力を借りながら障がい者が自立をしてきた例はたくさんあります。 FREE はもっと多くの障がい者の選択肢を広げられるように支援していきたい。この想いは創立当初から強くあります」と、池田さん。ヘルパーがいかに重要な存在か語ってくれました。